Unity Asset Storeでは、Unity公式アセット以外にも、ユーザーの創造性を刺激するものが数多く公開されています。それらを生み出しているのは、オリジナルに開発・配布する「アセット作家」たち。
ゲーム制作において欠かせない存在でありながら、スポットのライトの当たる機会は決して多くはない。黒子的に活躍し続ける作家たちは、どのような思いや考えを持って、日々アセットを作り続けているのでしょうか。
「公開から10年経っても使い続けてくれるファンが励みです」と語るのは、イギリス出身のゲーム開発者・Carlos Wilkesさん。これまでに手がけたアセットの『Space Graphics Toolkit』や『Paint in 3D』は世界中のプロジェクトで活用されています。
今回はCarlosさんにアセット開発のきっかけや制作のポイント、作家としてのやりがいなどをお聞きしました。
アセットの面白さは「世界中で」使ってもらえること!
——はじめに、ゲーム開発を始めたきっかけを教えてください。
Carlos:子どもの頃に『DOOM』というFPSゲームに夢中になったことです。自分でレベル設定をカスタマイズできる機能を制作し、父親の作ってくれたウェブサイトにアップロードしていました。そこから、3Dゲーム開発に特化したプログラミング言語のDarkBASIC Professionalを学び、C++やC#にも触れるようになりました。
——現在のお仕事は?
Carlos:Unity Asset Storeでリリースするアセット開発がメインです。他には、企業向けのVRゲーム開発やネットワークセキュリティの可視化プロジェクト、アプリケーション開発などに携わることもあります。
——アセット作家として、ご自身の代表作をお聞きしたいです。
Carlos:Space Graphics Toolkitです。宇宙空間でのシーンを構築するために必要な機能が揃ったアセットで、10年以上前に開発しました。2022年までに3回ほどコードを全面的に書き直しています。バージョンを更新するたびに新しい機能を追加し、グラフィックの品質も高め続けてきましたので、私にとって最も自信のある作品です。
——初めてUnityのアセットを作成したのはいつ、どのようなきっかけで?
Carlos:2012年にUnityがAsset Storeを開設するというニュースを見かけて「自分の制作物を世界中で使ってもらえたら面白いだろうな」と思ったんです。
当時はDarkBASIC Professionalで、プラネタリウムに使うアプリケーションのグラフィックスを作成していました。それを半年ほどかけてUnityでも動作するように調整し、初めてのアセットとしてリリースしたのがSpace Graphics Toolkitでした。
——ユーザーのリアクションはいかがでしたか?
Carlos:想像以上にポジティブなリアクションがありましたね。その頃は近しい機能を持つアセットがなかったので「新しいタイプのグラフィックスを追加できるようになった!」と喜んでもらえたのを覚えています。
最後に残った「最も面白そうなアイデア」から取り掛かる
——アセットをつくるとき、どういった作業から始めることが多いですか?
Carlos:作りたいアセットのアイデアリストを作成することから始めます。そのリストから「すでに優れたアセットが存在するもの」と「開発に時間がかかりすぎるもの」、それから「あんまり人気が出ないであろうもの」を消します。残ったアイデアから最もチャレンジしがいのあるものを選び、着手します。
——制作時に意識していることはありますか?
Carlos:「時間をかけた分だけ良いものになるとは限らない」と言い聞かせています。つい、コードのブラッシュアップに時間を費やしすぎたりしてしまうんですよね……。
また、より多くの人に興味を持ってもらうには、Unity Asset Storeでの見栄えも重要だと思います。機能説明のビデオやスクリーンショット、ロゴなどは、アセットの魅力が存分に伝わるように、こちらは時間をかけて丁寧に作っています。
——アセットが一つ完成してリリースされるまでにかかる時間はどのくらいですか?
Carlos:アイデアの複雑さにもよりますが、だいたい2ヶ月からから6ヶ月ほどですね。
——新しい技術へのキャッチアップはどのように?
Carlos:新しい技術やデザインを紹介している動画を見ながら、同じものを自分で開発してみることが多いです。手を動かしてみて不明な点があれば、その都度、論文やウェブサイトで詳細を調べます。
ユニークなプロジェクトに活用してくれるファンの存在が励み
——10年以上もアセットを作り続けるモチベーションを教えてください。
Carlos:公開から10年経っても使い続けてくれる方々の存在ですね。いつも私のアセットをユニークなプロジェクトで存分に活かしてくれるんです。
たとえば最近では、1994年にMS-DOSで作られた宇宙探検ゲーム『Ironseed』の開発者が、25周年版をUnityで制作するにあたって『Space Graphics Toolkit』を使ってくれました。昔から知っていたゲームですし、非常に嬉しかったですね。
私にとってアセット作りは、プロセス自体が楽しいのはもちろん、ユニークなプロジェクトや開発者も出会えて、結果として収入も得られるもの。Unity Asset Storeがあって本当に良かったと感じます。
——今後どのようなアセットを制作してみたいですか?
Carlos:マシンラーニングについて理解を深め、自分のアセットに実装したいです。直近では他のユーザーと協力して、3Dモデルを扱うアセットを制作中です。
私の作るアセットは、どんなプロジェクトやアートスタイルにも応用できる柔軟さが強みだと思っていますので。これからUnityユーザーの方々がどのような新しいものを生み出してくださるのか楽しみにしています。
——制作中のアセットが公開されるのを楽しみにしています!今日はありがとうございました。