岡山県岡山市と愛媛県今治市にキャンパスを構える岡山理科大学。2022年度より、情報系の総合情報学部情報科学科とロボット系の工学部知能機械工学科を統合・拡大し、情報理工学部情報理工学科が設立された。コンセプトは「情報技術を核として人間機能の拡張を教育研究する」。劉渤江学部長は「本学科では情報とロボットを融合した未来を考えたり、改革していく人材を生み出していく」と語る。また劉学部長は「Unityはゲームだけにとどまらない、汎用性のあるツール。もっと社会の中の日常に溶け込むようになって欲しいと願っている」という。
「学生ファースト」のUnity授業を
情報理工学部でUnity教育を行っているのが大山和紀先生だ。元々大山先生は大手ゲーム会社にて長年にわたりゲーム開発者として第一線にいたところを、「ゲーム業界を目指す学生を直接的に支援したい」という思いから教員として岡山理科大学に赴任した。
「ゲーム会社にいた頃に、新卒採用のために学園祭などを回っていると、学生さんがUnityでゲームを作ってすごく楽しそうにしているのが印象に残っていました。実際にゲームを作っていた立場として、ゲームを完成させるのがいかに大変かは身をもって知っているので、Unityであれば学生でもゲームを完成させることができるのが素晴らしいなとまず思いました」
情報理工学部では、「ゲームプログラミング」という15回の講義を2回に渡って行いUnityを教えている。
「Unityはゲーム以外にもさまざまな分野で使われていて、本校でも研究などにも使われていますが、授業では『ゲーム』にフォーカスしています。というのも、ゲームという分野になると学生のモチベーションがすごく上がるんです。そうやってプログラムのスキルを身に着けてから、これをゲーム以外にもどう使うのか?と自分で考えて他のことにも繋げていけるような講義をすることを心がけています」
具体的に、どのような講義を行っているのだろうか?
「講義を受けるうちに、ゲーム以外にも役に立つ知識を身につけられるような構成にしています。例えば、クラスやオブジェクトの考え方を言葉で説明するのではなく、制作していくうちに自然と体験していくような。楽しいものを作っていたら、いずれ『講義でやったところだ』と学生の役に立つことを意識しました。他にも、線形代数を生かして3Dを作るなど、ゲーム業界に進む場合に必須なポイントもしっかり押さえています」
クリエイターとしての経験から、講義を行う時に特に気をつけていることがあるという。
「ゲーム制作をしていた時にも、受け取る人のために作っているということを常々考えていました。それは教育になっても同じですね。学生が第一で、学生のためになることを教えたいです。講義以外にも、情報処理研究部というサークルの顧問をしたり、プログラミング同好会を立ち上げて、ゲーム制作の勉強会も行っているんです」
学生を支援する大山先生には、ある野望があるという。
「個人的な野望は、ゲーム業界に就職したい学生を全員ゲーム業界に送り込むことです。そのために、授業だけでなく課外活動でも学生を応援しています」
ゲームジャム開催!
2023年8月には、2日間にわたって「UAAゲームジャム」が開催された。大山先生にゲームジャムを開催した理由を聞いた。
「強制ではなく学生に自主的に参加して欲しいという想いから、夏休み中の自由参加のイベントとして開催しました。学生自身が積極的に、能動的に動けるようになってもらいたいなと。実際に開催して感じたのは、参加した学生がすごく集中して制作しているということですね。チーム分けされたメンバーは初対面同士でも分担を決めてプロジェクトに取り組んでいて、自分ごととして開発をしている。普段の授業でもそういった学生の自主性を引き出して伸ばしてあげるような取り組みをしていきたいと思いました」(大山)
制作されたのは、「地球に隕石が落ちてくるのを守るため、防衛軍からの通信音を頼りにして隕石を爆破させるゲーム」、「音で敵を誘導して倒すパズルゲーム」、ステレオパン機能を使った「魚がチャポンと跳ねる音を頼りに、うさぎが魚釣りをするゲーム」、「音の大きさに合わせて強くなるシューティングゲーム」など、サウンドをテーマにした個性豊かなゲームたちだ。
一人ではなくチームで開発する機会はなかなか無いうえに、ゲームジャムのチームメンバーは学年が入り乱れるためにほぼ初対面のこともある。たった二日間で作品を作り上げるため、学生からは「チーム内のコミュニケーションが難しかった」という感想も出た。その一方で、「コミュニケーションを取ることでミスに気づいて改善できた」「開発で詰まったところを先輩に助けてもらって、チーム開発の良さを知った」「二日間と期間が短く大変だったがチームの皆に支えられた」など、チーム開発のプラス面について知る学生も。授業や独学でのインプットを身につけるのに大切なのはアウトプット。短期間での開発を学生に体験してもらうことで、Unityのスキルをさらに高めるモチベーションになってもらうことがこのゲームジャムの狙いである。
Unity歴6年、インディゲームプロジェクトを立ち上げる!
総合情報学部の藤波和丸さんは、インディゲームを制作するプロジェクトを自主的に立ち上げ、現在精力的に開発している。
「プロジェクトを初めたのは数ヶ月前です。自分が、『ゲームを作りたい!』という想いから発起人となって、メンバーを集めました。開発チームは、直接声をかけた学内のメンバーだけでなく、SNSで呼びかけて賛同してくれた大阪や東京の方など学外の方も混合になっています。自分はディレクター兼プログラマをしていて、チームにはプログラマ、企画を立てるプランナー、サウンド担当などがいます」
制作中のゲームは、ダークファンタジーの2Dアクションゲーム。
「インディゲームの中でも一際目立つような作品が作りたいと思っています。凝ったグラフィックや音楽で、美麗かつ特徴的な世界観を打ち出したいんです」
藤波さんはこれまでは個人でゲーム制作をしており、チーム制作は初の経験だという。
「Unity歴は6年くらいです。高校一年生からプログラミング教室に通って、そこでUnityを使えばゲームが作れるということを知り、C#を勉強してUnityでゲーム制作を始めました。チームで制作するのは、一人での開発とは全く違いますね。一人で制作していると、他の人の作品を見た時に自分よりもっとすごい人がいる!と考えて落ち込んだりしてしまうんですよ。でもチームでやっていると、メンバーが自分の想像以上の仕上がりにしてくれたりして、もっと頑張ってみようとポジティブになれます。このゲームには本当に力を入れたいので、これから5年くらいかけて完成させるつもりです」
藤波さんのインディゲームは、大山先生らの助言を受けながら、絶賛制作中。いずれはリリースし販売にこぎ着けたいと考えているという。