「ヘンなゲームコントローラー」を企画する大学授業をやったら、見たことがないゲームアイディアが沢山生まれた…という話

こんにちは、Unity Japanのコミュニティ・アドボケイトの田村幸一です。私は普段、Unityを広く世の中に伝える、広報的な役回りをしています。

今回は京都芸術大学 キャラクターデザイン学科の村上聡先生にご寄稿いただき、2022年11月12日に行われた京都芸術大学×立命館大学×京都精華大学の合同授業(ワークショップ)のお話を紹介したいと思います。

京都府内でUnityを活用しながらゲームデザインについての授業を行っている3校が、「ヘンなゲームコントローラーを企画する」というワークショップを開きました。すると、学生から見たことがないゲームアイディアが出るわ出るわで、非常に有意義だったようです。

実際にどんなワークショップを企画し、どんなゲームアイディアが生まれたのか、そしてそこからどういう知見を得たのか、早速ご覧いただければと思います。

(特にゲームアイディアに困っている方は必見の記事ですよ!)

それでは以下、村上聡さんのご寄稿です。

目次

京都芸術大学×立命館大学×京都精華大学の合同授業について

2022年11月12日(土)に、京都芸術大学、立命館大学、京都精華大学という、京都でゲームデザインを研究する大学の初の合同授業が行われました。その名も「ヘンなゲームコントローラーを企画する」ワークショップ。テーマは、Unityで作られたゲームを様々なデバイスに繋ぐことによって生み出される、既存の発想の枠にはまらないユニークなゲームの開発です。

ワークショップは三部構成となっており、第一部はゲームデザイナーが制作したゲームの試遊とレクチャー。第二部は立命館大学の奥出先生によるUnityと外部デバイスの接続実験。そして第三部は、様々なセンサーをデバイスとして用いた新しい発想のゲームを学生たちが企画するグループディスカッションとなります。

第一部 ブラインドがコントローラー?!「変なゲーム」を試遊

第一部のゲストは、フリーランスのゲームクリエーター宮澤卓宏氏と中野亘氏。お二人はビットサミットや海外のゲームショウなど数々のゲームイベントで毎回変なゲーム(失礼w)を出品しており、そのユニークさからテレビなどのメディアでも何度も紹介され話題を呼んでいます。お二人のお話から、デバイスから新しい遊びを発想する方法を学んでいきます。

宮澤卓宏氏
中野亘氏

お二人が作られたゲームを展示していただき、学生たちが試遊しました。様々なメディアでも話題になった作品ばかりで、いわゆる王道路線とは異なる独特の世界観と遊び心地に、学生たちも大いに刺激を受けていました。

箱だけのブルース

全裸の主人公(野球拳で負けて服を全部失くした人)が段ボール箱に身を隠しながら自宅に帰るゲーム。通行人が近づいてきたら素早く段ボールの中に身を隠し、安全になったらダッシュで移動します。しかし、通行人に見つかると通報されてゲームオーバーに。床と段ボール箱の距離を計測するセンサーを用いて、実際の段ボール箱を上下に動かすことで画面内のアクションとして反映されます。

イセキクライマー

ロープを引っ張ることで、ニワトリが崖をよじ登っていくアクションゲーム。シャフトに回転センサーが取り付けられており、ロープを引っ張るとその回転が画面内のニワトリの動きに連動します。

ボス,ブラインド,ブランデー

ブランデーグラスを回転させてパワーを溜めて、ブラインドを下ろして対戦相手を攻撃する、石原裕次郎の気分が味わえるゲーム。こんなアホな(失礼w)ゲームは初めて見たとばかりに学生たちは大ウケでした。

その他にも、鳥の翼を模したコントローラーを両腕に取り付けて実際にはばたくことができる『鳥川鳥三』、アイスの棒を使ってリズムに合わせて砂場に墓標を立ててモンスターを弔う『僕のお墓はアイスの棒』、さらには最新作となる『みんなでもぐらたたかれ』などを紹介。

圧力センサー、加速度センサー、回転センサー、音センサーなど、様々な外部デバイスを駆使した斬新なコントローラーを使って、従来のコンシューマゲームでは味わえなかった面白さを体験することができました。

第二部 Unityと外部デバイスを接続する!奥出先生のレクチャー

奥出先生

第二部では、Unityと外部デバイスを接続するための基本概念を学ぶため、立命館大学の奥出成希先生にレクチャーをしていただきました。

奥出先生は立命館大学を拠点に、京都芸術大学でも、京都精華大学でもゲームプログラミングの授業を担当されています。

普段の授業では、Unity内の基本機能を組み合わせてオリジナルゲームを開発していきますが、今回はそこに外部デバイスとなる「M5GO」を取り入れて、Unity内に表示されるCGを動かす方法を学んでいきました。

実装作業は参加した大学の学生をシャッフルして8つのチームを構成して行いました。初対面同士なのに共通の目標を持っているためにすぐに打ち解け合い、話し合いも白熱していました。

それでも、ネット環境だったりPCとデバイスとの相性だったりと、なかなかうまく動作せず、どのチームも四苦八苦。

まずはPCとM5GOを接続
うまく動作せず、トラブル解消の方法を探る学生たち
解決法が見いだせず頭を抱える学生も
苦労の甲斐あって、ようやくUnity上で正常に動作

うまくいかない状況に対して、学生たちがわちゃわちゃと試行錯誤する様子自体が一つのゲームを攻略しているようにも見えます。我々教員としては、正月にいとこで集まって騒いぐ甥っ子姪っ子を見ているようで、なんだか微笑ましく思うのでした。

第三部 大学の垣根を超えてオリジナルゲームを考える

第三部では、チームごとにオリジナルゲームの企画を立てて発表していきます。再び学生たちをシャッフルして、グループディスカッションを実施しました。

企画を考える上では、3つの約束事を条件としました。

  1. コンシューマゲームではなくPCゲームを想定
  2. マウスやキーボードで、通常のゲーム用コントローラーは禁止。まだゲームに使われていないようなセンサー類から数値を取得してゲームに応用すること
  3. ストーリーやキャラクターに頼るものではなく、仕組みや体験の面白さから発想すること

ゲームといえば横スクロールアクションやノベルゲーム、オープンワールドといった固定観念を抱きがちですが、新たな表現の可能性を見出す方法を学び、学生たちの構想もどんどん膨らんでいる様子でした。

ディスカッションにあたり、三大学の一年生~四年生と大学院生をシャッフルしてチームを編成しました。さらにその中にはゲームデザイナー、ビジュアルアーティスト、プログラマーが混在するため、多種多様な視点でのアイデアが溢れてきました。

最終的に、チームで企画がまとめると、代表者を選出してプレゼンテーション。そこで教員と、宮澤氏、中野氏によるフィードバックを行いました。

プレゼンでは、 様々なアイデアが発表されました。例えば「ペットボトル」をコントローラーにして、握ったり振ったり、キャップを回して弾を装填するシューティングゲームの案。

懐中電灯をコントローラーにして、光を当てることで植物を育てたり、光を嫌う敵を撃退する案。

「背負い投げ」の動作を何か面白い遊びに変えられないかと、サンタのプレゼント袋を叩きつけるような動きに見立てた案など、突拍子もないアイデアが次々に発表されました。

発表を終えた後は、教員全員からの総評

 多様化の時代どころか、5年後はどうなっているか予想もつかないほどの速度で進化するゲーム媒体に対し、今の流行りを追いかけるのではなく、全く新しい切り口での「面白い」を発見していく力を身に付けることが重要となります。

また、ゲームはゲーム、アニメはアニメと、エンタメに垣根を作ること自体が意味をなさず、領域を横断して、ともすればどこからどこまでがゲームなのかすらも分からないような新しいエンタメが生まれる可能性も十分あるわけです。

今回の授業では、宮澤氏と中野氏による「変なゲーム」(失礼w)を通して、「アイデアはどこにでも転がっていて、それに気づく力があるかどうかが重要」であり、何より「普通」という考えを排除して、新たな表現を実現することの重要さを再認識させられました。

京都のゲーム系教育機関同士の連携授業はいつかやってみたいと考えていながら、なかなか実現しなかったのですが、今回の宮澤氏と中野氏を招聘するタイミングで、こんな面白い授業を本学だけでとどめていては勿体ないと思ったことから一気に話が進み、実現に至りました。

今後もさらに連携を深め、領域の横断だけではなく教育機関の垣根すらも壊して力を合わせ、共に世界を面白くする活動をしていかねばならないと決意した、そんな実りあるワークショップでした。

今後の合同授業では、toioやMESH、Arduino、その他にもジャンク屋で探してきた様々なセンサー類を組み合わせることで新しい価値を生み出すことは可能なので、そんな電子工作とビデオゲームの融合を試みたいと考えています。

「遊び」を生み出すなら、いつまでも16:9の画面に拘る必要もなく、モニターやプロジェクターでの表示に拘る必要もないと思っています。壮大なストーリーや超美麗グラフィック…でも良いとは思うのですが、そういう制作は会社に入れば嫌というほど経験できるので、学生の間にしか表現できない独創性と新規性の高いコンテンツを生み出すことに力を入れていきたいです。

表現のためのUnity

ところで、京都芸術大学では2年次の「ゲームプログラミング」という科目の中でUnityの基本的なオペレーションを教えています。前期は基本オペレーションで、後期は実際のゲーム制作という流れです。

芸術大学の学生は基本的に絵を描きたくて入学した学生が多く、そもそもUnityに触れることを想定していない人がほとんどです。1年次の「ゲーム制作基礎」という授業の中で遊びの文化やゲームデザインについて学んでいくのですが、1年次の後半に入ると徐々に絵を描くことからゲームを作ることに興味を持つ学生が増えてきます。それでもC#はハードルが高いので、まずはVisual Scriptingで直感的に構造を理解してもらい、表現したい内容に沿って少しずつC#を習得していく形にしています。

その知識をベースとして、ゲームやCGなどのゼミの中で、ビデオゲームの制作のみならずインタラクティブアートの分野にも応用しています。重要なのは「ツールを使って何を表現するのか」を問うことで、学生たちに自由に制作をさせていきます。

これまではゲームゼミの学生がメインでUnityを使用してきましたが、ここ最近ではCGやイラストを専攻する学生も、表現の幅を広げるために使用し始めています。

入学当初は静止画の制作を中心にしていた学生も、次のステップとして動画へ移行し、さらにそこにインタラクティブな要素を加えることで鑑賞から体験へと表現を発展させていくパターンも散見されます。

本学にはファインアートや建築、演劇など13の学科がありますが、これからの混沌とした時代の移り変わりを考えると「領域」という言葉で垣根を作るのではなく、いかに視野を広げて領域を横断するかが問われます。Unityもゲームに限らず勉強や対話といった生きる上で欠かせない広い意味での「遊び」の発展に活用できると考えています。

京都は遊びの発祥であり、数々のゲーム制作会社のお膝元。この狭い地域に大学が密集している特異な環境でもあります。地の利を生かして「京都から『面白い』を発信する」をテーマに連携校を増やしながら活動を拡大していきたいと考えています。

(文、写真/村上聡 – 京都芸術大学 キャラクターデザイン学科 教授)

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