創立から半世紀の歴史を持つ東北電子専門学校。仙台駅からも近くアクセスの良い立地にキャンパスを構えており、学生の活気に満ち溢れている。多彩な分野の全22学科の中には、ゲーム・CGなどに特化したゲームクリエーター科、ゲームエンジニア科、CGクリエーター科などを擁するマンモス校だ。今回は、ゲームクリエーター科の遠藤航先生にUnity教育への取り組みなどを聞いた。遠藤先生ご自身も本校の出身だ。まず、ゲームクリエーター科とゲームエンジニア科ではどのような違いがあるのだろうか?
「ゲームクリエーター科は2年課程で、企画系とCG系をメインに、プログラムなども幅広く教える一方で、ゲームエンジニア科は3年課程でプログラムに特化しています。今年は特にゲームクリエーター科の学生が多く、新型コロナの関係で東京の専門学校ではなく地元の学校を選んだのではないかと考えています。同じく、CGクリエーター科も学生数は伸びていますね。以前はゲーム関係に就職したいというと保護者に反対される、ということもありましたが、年を追うごとに保護者の理解も進んでいて、今では保護者に進められて本校に進学する学生もいます。就職の内定も東京の有名ゲームスタジオから多数頂いているんです」
動かしてみて初めてわかること
遠藤先生がUnityを始めたのは2013年くらいだという。その後、エンジニア教育をする際に、プログラミングが得意でない学生のための「お助けツール」として使っていた。
「ゲームクリエーター科では、6月初旬から開発専攻とCG専攻に分かれていきます。そこで4月からゲーム開発に挑むお試し期間として、Unityでゲーム制作を体験するようにしました。開発専攻はプログラムも企画も全部自作するのですが、CG専攻であってもプログラミングはやっておいたほうがいい。ボールを転がすゲームをチームで制作させると、画で張り切る学生もいればプログラムやギミックに凝る学生もいて、自分のやりたいことがより明確になってくるのではないかと思います。Unityはあまりプログラムができなくてもやりたいことを実装できるので、そういう面ではありがたいですね」
また、開発専攻でもCG専攻でもUnityで実際に作ってみることで良い作品ができるという効果もあるという。
「プランナー志望の学生が、ただ漠然と企画書を書いても、やっぱり動かしてみないと面白いかどうか分からなかったり、実際には作れないような企画を考えてしまいます。作る方を経験しないと具体的なイメージが湧かないというか。また、CG志望もやっぱりCG単体で動くのとゲームでインタラクティブに動くのとはまた違うので、自分が作ったCGをエンジン上で動かせるのはすごくいい相互作用が生まれます」
受け身ではなく、貪欲に自分から学んでいくこと
遠藤先生が「伸びる」と思う学生には、ある特徴がある。
「ゲームクリエーター科は2年間しかありません。だから、待ってると何もしないで終わってしまう。伸びるのはやっぱり、『ゲームが作りたくてしょうがない!』という意欲のある学生です。学生の中にも、YouTuberをやったり、小説を書いて就職活動が不要なくらい稼いでいる子もいる。好きだったら、手を動かせばいいんですよ。『ゲームが好き』だけで進学してしまうと、プログラムの難しさなどで心が折れてしまう。不思議ですよね。野球が好きだからという理由で野球選手になろうと思う人はそんなに多くないのに、ゲームは好きだからという理由だけでクリエイターをめざす人が多い。だから好きという気持ちだけではなくて、自分が作り手になると意識できる人は強いんです。実際に入学前から個人で作品を作っている学生もいます。とは言え業界への就職のことを考えると、個人で作品を作っても企業への繋がりは作りづらいですよね。その点本校に入学すれば、企業との繋がりで就職に役立つし、デジタルミュージック科などいろいろな学科があるので、他ジャンルのクリエイターとのチーム制作の機会も体験できる。学生時代にそれを体験できるのはすごく大きいと思うので、チーム制作は結構重点を置いています」
コンテスト「DA-TE APPs! 2021 Game部門」で活躍したメンバー
ここで登場してもらったのは、団体「GLOBAL Lab SENDAI」が開催するコンテスト「DA-TE APPs! 2021 Game部門」で活躍した2チームのメンバー。コンテストでは、ゲーム業界の第一線で活躍するゲームクリエイターからアドバイスを受けながら、学生が半年程かけて作ったアプリを実際に公開するというもの。そしてそのゲームに広告を付けて、その広告の収入額で競うというルールだ。そこで海外からの収入だけで競うプログラムで優勝を獲得したのがゲーム「IcecreamFever」。トルコやロシアなどからの人気が高かったという。
「今回作ったゲームのジャンルは『ハイパーカジュアルゲーム』といって、国や地域を問わず、なるべく言葉がなくてもプレイできるゲームです。私たちは落ちてくるアイスを積み上げるゲームっていうコンセプトにしたんです」
「実装で苦労したのは、トゥーンシェーダーを使おうと決めるまでですね。2Dと3Dを違和感なく融合させるためにすごく気を使いました」
そして準優勝したのが「Cleaning Guys」。街にいるキャラクターや車などに水を放射することで綺麗にする、という、スワイプだけで完結するハイパーカジュアルゲームだ。
「この学校を選んだのはゲームエンジンを授業で採用していると聞いたからです。本ゲームのステージは十数個あって、元々人手の少ない班だったので、アセットストアで使えそうな素材を見つけてきてそれを使いました。例えばプレイ画面内で大きな建物を前にするとか、水辺が広がっているとか、コンセプトを考えてレイアウトしていきました」
「スマホのアプリという都合上、軽くしないといけないんですが、最初の頃、何も考えずに作っていたらすごく重くて。3Dということもあるし、軽量化には苦心しました。ライティングのこともわからないくらい何も知らなかったので、とにかく勉強しながら作ったんです」
「ハイパーカジュアルゲームって何が受けるのかわからないところがあるので、出してみないと遊んでもらえるのかわからない。メンターさんに、”ハイカジの真髄を見た”と言われたのは嬉しかったです(笑)」
両チームともプランナーやCG志望の学生なので、実はチーム内にプログラマがいない。自らプログラミングに挑戦し、見事二冠を受賞したのだ。これからもきっと目覚ましい活躍を見せてくれるだろう。