デジタルコミュニケーションを学ぶ日本で唯一の単科大学であるデジタルハリウッド大学大学院では、2014年からUnity教育をカリキュラムに導入している。CG、映像、プログラミングからビジネスまで幅広く教えるデジタルハリウッド大学大学院にて、どのようにUnity教育を行なっているのか、沖昇氏と饒平名秀成先生に聞いた。
自らサービスを構築したり、いろいろなツールを使って物を作り上げていく力を養う
幅広い教育を行うデジタルハリウッドだが、その芯には何があるのだろうか?
「デジタルハリウッドは、デジタルツールを使う、あとはデジタルを使ったサービスを使ったりして、世の中をどんどん変革していこうという人材を輩出するための学校です。なので、自らサービスを構築したり、いろいろなツールを使って物を作り上げていくということを、4年間を通して体験する。それが大学ですね。大学院のほうは、研究を自身のビジネスにする。もっと世の中に広めるにはどうするべきか。‥という研究をしていくための所になります」(沖氏)
Unityをカリキュラムに導入した理由は?
「やはりゲームを作りたいというニーズがすごく高まったんですね。ただ、ゲームを作るとなったときに、もともとは自分でプログラミングをして、いろいろと動くものを作りなさい、となるんですけども、パッケージになっているゲームエンジンというものがあって、それがすごい便利だったんです。Unityというツールを導入する前にいろいろ調べた結果、ゲームエンジンという側面だけでなく様々なシミュレーションが行える優秀なツールであるというところが大きかったですね。メディアアートの分野で、Unityを使っている所がたくさんあるというところもあるので、ゲームを作るだけではなくて、いろいろな物を作りたいときに、学生のニーズに広く応えられる基礎的なところとして、Unityを勉強するべきだというところで導入を決めました」(沖氏)
ATPのメリット
デジタルハリウッドでは、企業系トレーニングスクール向けのUnity公式プログラムATP(Authorized Training Partners)に加盟し、様々な特典を活用したカリキュラムを行なっている。ATPに加入したメリットは?
「教員向けの教育プログラムがものすごく充実していて、認定トレーナーの資格というものが教員に与えられるようになりました。ですので、今までその教員の経験値から教える科目だったのが、きちんとメソッドがあって、基礎があって、応用があるという形で、段階を踏んで教員が理解を深めることができる。それを学習する学生にも還元できるというところで、トレーナーの教育を先生方が受けることによって、Unityの教育の質が、今までより一段も二段も上がってると考えています」(沖氏)
教員の質が上がることによって、教育の質が上がる。良い循環が出来ている。
「今まで、ゲーム開発の分野を得意としていた先生もこのプログラムを受けて、知識の補完ができるようになりできるようになり、学生の質問にも答えることができますし、先生もバッジがあるから「俺、ここまで教えられるよ」という自信にもなっています。学生にもトレーナー資格の取得を薦めています。また、Unityのほうで、オフィシャルで公開されているトレーニングの講座が素晴らしいんです。技術面で詰まった学生には、Unityのオフィシャルな教材で勉強してから先生に質問すると、より学習が深まるよ、とアドバイスしています」(沖氏)
実際のカリキュラムに迫る
それでは、実際のカリキュラムではどのような授業が行われているのだろうか?
「主にプログラミング言語を学んできた学生たちに向けて、もっとグラフィカルなものや、複雑なシステムの構築、規模の大きなものを作るという中で、ゲームエンジンというツールを使って、よりリッチなコンテンツを作れるようになるという目的で、開発の演習を行います。授業ではゲームの開発もやりながら、最近流行りのVtuberのようなキャラクターコンテンツや、AR・VR というようなシステムの開発、他にはムービーを作るような、動画作品を作る演習も行っています。『Unityを用いてできることを包括的にやっていくよ』という形で、科目の運営を行っています」(饒平名先生)
デジタルハリウッドでしか学べないこと。それは何だろうか?
「例えば情報系の大学ですと、プログラミングのみ、コンピューターサイエンスのみで、美術大学だと、絵の描き方やデザイン関係に限られてしまうことが多いんですが、デジタルハリウッドではそれらが両方学べるんです。そこから、プログラムもできて絵も描ける、なんなら音声データも作れる、かつ、ディレクション・企画周りも対応できるという人材になって、様々な分野へ進んでいくことができる。そこが良い点ではないかと思います」(饒平名先生)
Unityの優れた点は?
「やはりゲームエンジンとして作られているという前提があるのでそ、グラフィックのレンダリング周りとか、物理演算の計算とか、ネットワーキングなど、ソフトウェア側で用意されている機能が豊富にあることですね。だからその分、学生自身が作りたい作品の制作に集中できるというところで、より作りたいテーマに対してフォーカスしていって、クリエイティビティを出すというところに対して集中できるというところが良い点だと思います」(饒平名先生)
コロナ禍での対策
デジタルハリウッドでは、徹底したコロナ禍対策を行なっている。
「2020年度の始まりからずっとオンラインで講義の運営を行っておりまして、オンラインの会議ツールを利用して学生たちに言葉で伝えつつ、私のほうのPCの画面を共有しながら開発画面を見せて、「こういった形で開発を進めていくんですよ」というような教え方をしています。コミュニケーションはチャットベースのコミュニケーションと、講義中に話しかけてもらうような音声ベースのコミュニケーションを基本としつつ、講義が終わった後なども、大学のほうでグループウェアを運用しておりますので、そちらでのやり取りとか、Slackなどのツールを用いて質問対応したりということで、色々な方法を模索しながらやっているという状況です」(饒平名先生)
学生たちもの順応も早かったという。
「学生たちは、講義に関しては比較的早く順応していったという印象ですね。やはりデジタルを専門に行なっている大学ですので、他の科目でも、全ての科目が一斉にオンラインになりましたので。特段、私のほうの科目としては、導入に手間取ったということはなかったですね」(饒平名先生)
デジタル世代の学生が、これからどんな作品を作っていくのか楽しみだ。