東京・亜細亜大学 未来の選択肢を増やすためのUnity教育

亜細亜大学ではUnity教育カリキュラムを取り入れており、堀玄教授が積極的に研究を行っている。2〜4年生向けの授業「データサイエンス応用プロジェクトⅡ」では、UnityのAR FoundationやXcodeを使ってiPhone用のARアプリの開発、キャンパスのデジタルツインプロジェクトである「亜細亜大学メタバーシティ」に取り組んでいる。亜細亜大学において、どのようなUnity教育が行われているかを堀先生に伺った。

堀玄教授

なぜ、堀先生は亜細亜大学でUnity教育を始めたのだろうか?

「最初は業界標準の3Dゲーム開発環境ということで興味を持ち、書籍やネット上の情報をもとに自分で使い方を覚えました。ある程度使い方を覚えると、文系の亜細亜大学の授業でも取り上げることが可能であると確信し、2017年から授業に取り入れました」

学生作品

現在ではUnityを使う授業を少人数の「データサイエンス応用プロジェクト」の枠に移し、「プログラミング言語」の授業ではPythonを教えている。Unityを実際に導入した結果、学生たちはモチベーション高く取り組んでいるという。
「多くの学生が他の授業では見たことがないくらい熱心に取り組みます。自分で3D空間を作り、その中を歩き回れるということが面白いのだと思います。一人で亜細亜大学のキャンパス全体をモデリングしてきた学生もいるほど夢中になっていました」

Unityで成果物を作るときに重要なのは、学生が考える「余白」を残していくことだ。

目次

『亜細亜大学メタバーシティ』


「ARアプリの開発でも、『亜細亜大学メタバーシティ』でも、製作物の中で学生自身が自由に決める部分を用意しています。ARアプリでは、登場させる3Dのキャラクターを学生が自由にデザインしています。『亜細亜大学メタバーシティ』では、参加する学生がキャンパス内の建物や設置物など自分で選んだものをモデリングしています」

亜細亜大学メタバーシティと実際の校舎

「亜細亜大学メタバーシティ」とは、キャンパスのデジタルツインプロジェクトだ。メタバース上に構築する大学(ユニバーシティ)をメタバーシティと呼んでいる。プロジェクトのきっかけは、学生の行動から始まった。


「最初にUnityを取り上げた授業で『キャンパスの建物の中から好きなものをひとつ選んでモデリングする』という課題を出したのですが、学生が提出した課題の質が非常に高かったので、これらを3D空間に配置してキャンパス全体を再現しようとしたのがプロジェクトの始まりです。その後は、このプロジェクトに参加する学生がキャンパス内の自動販売機やベンチなどの設置物をモデリングしては追加することを続けています」

亜細亜大学ではスポーツにデータサイエンスを応用するスポーツ・データサイエンスにも取り組んでいる。Unityで開発中のスポーツ・プロジェクトとして、野球のピッチャーが投げるボールの軌道をバッターの視点で3D空間に可視化するVRバッティング練習システムがある。

野球のピッチャーが投げるボールの軌道を、UnityとVRヘッドセットを使ってバッターの視点で3D空間に可視化するシステムを開発

学生時代にUnityに触れた経験が役に立つ

亜細亜大学の学生全てがエンジニアを目指しているわけではない。あくまで、未来の選択肢を増やすためにUnity教育を行っているという。

「多くの学生がUnityを使う授業に非常に熱心に取り組んでいますが、このような学生が全てゲーム業界やXR業界を目指しているという訳ではないように思います。将来ジェネラリストとしてXR関係の企画に携わるときにも、学生時代にUnityに触れた経験は役に立つと思います。一方、本気でゲーム業界を目指すという学生にはUAAを活用してUnityの資格を取るように勧めています」

Unityで開発しコンテンツを自らが作ることで、学生の得られるものとは何だろうか?

「ゲーム開発やXR開発に関するスキルの基礎が身に付くこともありますが、バーチャルな空間を自分で作ってその中を歩き回る体験自体が、メタバースが主流となっていく今後、重要になってくると思います。すでに述べましたが、ジェネラリストとして企画に携わる場合であっても、このような経験があれば企画全体を俯瞰する視点の精度が上がります」

行動力あるアジアグローバル人材の育成のために

左からド・ティタオ(経営学部2年、ベトナム)、チャンロン・ヴー(経済学部2年、ベトナム)、トウ・シンイ(経営学部2年、中国)、ゴ・ギョウミン(経営学部2年、中国)

亜細亜大学には学部・大学院を含め、327名の外国人留学生が在籍している(2021年4月時点)。

建学の精神「自助協力」に基づき、「行動力あるアジアグローバル人材」の育成を掲げ、日本とアジア地域をつなぐ人材の育成に特に力を入れている。現在、学部教育とあわせ、5つの海外留学プログラムを用意しており、現在までに累計1万4000人以上の留学経験者を輩出している。また、世界14ヶ国語の言語を設置しているほか、フィールドワークや英語圏・アジア圏などのさまざまな研修先で海外インターンシップを行うなど、国際教育に力を入れている。今回は受講生の留学生に話を聞いた。

アジア大学を選んだ理由は?
「亜細亜大学を選んだ理由はグローバルな学習環境が魅力的だったからです。日本人だけではなく、多国籍の留学生が多いので、いろいろな文化を学ぶことできます」(ティタオ)
「私はホームページを見て選びました。双方向型のアクティブラーニングやインターンシップも積極的に行っていることが分かり、とても魅力的に感じました」(シンイ)


Unityの授業ではどんなことを行っていますか?
「UnityでARアプリに挑戦しました。3Dキャラクターをデザインし、アニメーションを作成でき楽しかったです」(ティタオ)
「VRコンテンツを作りました。ゲームを作る作業は大変だと思っていたのですが、やってみたらすごく楽しかったです。今後はUnityを使って、簡単なゲームを作ってみたいと思っています」(シンイ)


最後に、将来の夢を聞いた。
「こどもの頃からゲームが好きでやってきました。クリエイターとしてオリジナルのゲームを作ってみたいと思います」(シンイ)

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