東京都 学校法人 片柳学園 東京工科大学・日本工学院八王子専門学校/Unityを使って学生が『考えて、考えて、考え抜く』教育を

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5年先、10年先を見据えた教育を学生に

日本ゲーム大賞アマチュア部門で優秀賞、U-22 プログラミング・コンテストで経済産業大臣賞など、数々のゲームコンテストで各賞を総なめにするほどの実力を誇る学校法人 片柳学園 東京工科大学・日本工学院八王子専門学校。東京・八王子にある広大なキャンパスには、専門学校だけでも34学科104の専門分野が設置されており、充実した教育が行われている。

今回は、東京工科大学メディア学部 三上浩司教授、日本工学院八王子専門学校 デザインカレッジ 原田俊信カレッジ長、同校同カレッジゲームクリエイター科 大圖衛玄科長、本山友太先生の四人にお話を伺った。

東京工科大学メディア学部 三上浩司教授
左:原田俊信(日本工学院八王子専門学校デザインカレッジ長)
中:本山友太(日本工学院八王子専門学校ゲームクリエイター科 教師)
右:大圖衛玄(日本工学院八王子専門学校ゲームクリエイター科四年制 科長)

片柳学園でUnityを導入したのは2010年、本格的に授業のカリキュラムに取り入れたのは2014年から、とかなり早い段階から。一体その理由は?

「それまで本学園でのゲーム開発教育は、大学ではC++をベースとした3Dの大学独自のゲームエンジンを、専門学校ではC++を専門独自のライブラリを使っていたので、例えばゲームジャムなどで学校をまたいで一緒にプロジェクトをやるときに、何か共通のものがないとやりにくいという悩みがありました。そこで『Unityを導入してみよう』ということになったのが2010年くらいですね。学生たちも『プロが使っているものと同じツールだ!』と喜んでくれて。また、Unityは早く結果が出るので、学生のモチベーションに繋がっています」(三上先生)

Unityを導入後、大きく変わったことは何だろうか?

「一番大きいのは、プロトタイプを作るスピードが速くなり、トライアンドエラーの機会が増えたという点。Unityを習得すれば、ゲームデザイナーが実際に自分のアイデアを実装したり、レベルデザインも出来てしまう。また、アニメーションとか3Dアニメーションの人が、自分でキャラクターのセットアップをしたり。今までは『素材を提供する人と組み上げる人』という関係だったのが変わってきて、チーム全員でゲームを作るという感覚になってきた」(三上先生)

その分、意思伝達のスピードが速くなり、コミュニケーション上での誤解も減り、作品のクオリティが上がっていくというわけだ。

「専門学校の方では、Unityを導入してから、ゲームが完成する割合が飛躍的に上がりましたし、完成物のクオリティもかなり上がりました。昔は難しかった3Dゲームも作れて、ルックも良くなって」(本山先生)

学生作品「Wild West Locomotive」
第14回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2021」優秀賞受賞
制作メンバー:
加藤 誠裕 / 高桑 流騎 / 矢﨑 旭人 / 槌本 晟也 / 川畑 遥音 / 楠美 龍之助 / 越智 綾香

専門学校にはeスポーツ関連の運営やジャーナリストなどを目指す「ゲームビジネスコース」があるが、そういった間接的にゲームに関わる人材を目指す学生にもUnity教育を行なっているという。そういった取り組みが、片柳学園の学生たちが数多のゲームコンテストで優秀な成績を残す事ができる秘訣かもしれない。

「受賞しているゲームの大半が、実はUnityで作ったものなんです。蓄積したUnity教育の成果が出て来ている。Unityであれば、プログラム力が足りない学生でもステージを作ることができるので。そうやってツールが進化して、ゲームが作りやすくなった分、プログラミングが苦手な学生でもゲームの制作ができているのがありがたいです」(大圖先生)

また、UAAならではのメリットも感じているそうだ。

「UAAのメリットは、Unityの研修センターなどいろいろな設備を利用しやすいこと、また、学生が家で何か作業したいというときでも、公式ライセンスで制作できることですね」(大圖先生)

もし、火星で暮らすことになったらどうする?幅広いUnityの活用法

充実した設備

片柳学園では、ゲームプログラミングやプランニングだけでなく、ゲームサービスの運用管理、ゲームマーケティングやプロモーションなどのスキルも学ぶことができる。ゲーム業界を目指す学生たちの夢を叶え、さらに広げていく教育を行なっている。

「大学のメディア学部では、学部全体の3分の1、100人程度がゲーム業界を目指しています。まずは基礎をしっかり学んでから、ゲーム開発における問題点ないしは表現の問題点を探してきて、その問題解決を行うような、R&Dをやるような形にしています。そのための基盤として、プロと同じ環境でゲームが作れるというUnityは素晴らしいですし、卒業研究でも、自分で実装することができる。紙の上だけでプレゼンテーションをよりもより核心を付いた研究が出来るようになります」(三上先生)

また、ゲーム以外のいわゆるノンゲーム分野の研究でも、Unityが使われている。

「ロボットやデバイスを研究する学生がUnityを覚えると、Arduinoと組み合わせてインタラクティブアートを作れたり、さらに音声の解析のようなことにも使えるんです。VR・ARジャンルの他、教育や建築・設計のデザイン・シミュレーション用にも使えますし」(三上先生)

「専門学校ゲームクリエイター科では、やはりゲームが主体ですが、最近ではVRを作る学生も多いです。ゲーム以外の用途としては、全学科横断でやっている「マーズプロジェクト」があります。『もし、火星に移住するとなったら、どういうことが必要か』というテーマでアイデアを出して、実際に作ったり、実験を行うんです。そこでVRで火星の環境を見たり、火星の住居をシミュレーションしたり、火星の表面を自動車で走ったり。火星だと運動不足とか、娯楽不足になるだろうということで、テニスゲームを作ったりもしています」(本山先生)

「考え抜け」

「片柳学園の理事長(千葉茂氏)がいつも言うのが、『考え抜け、考え抜いてやれ』ということ。今回のコロナ禍の時にどうすれば学生のためになる授業が出来るのか、終わった後もどうすれば良い形になるのかと考えました。ただじゃ転ばない」(三上先生)

「片柳学園のモットーは『学生ファースト』なんです。ゲームエンジンには、今まで開発者が確立してきた、ゲームの技術の歴史みたいなのが入っているんです。ゲームの今までの技術と歴史を学ぶ、そういう教育を目指しています」(大圖先生)

「片柳学園の学生たちには、学生のうちからプロレベルのものをつくりあげ商品としてリリースできるようになって欲しい。そのために学生とともに日々考え、学び続けています」(原田先生)

これからの片柳学園の学生たちの活躍が楽しみだ。

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