シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで行われた「2021 JIKEI COM Game & e-Sports SHOW」。滋慶学園COMグループの中でもゲーム、AI、IT、ロボット、CG、アニメ、デザイン等を学ぶ「TECH.C.」ほか、姉妹校12校合同開催による作品展示会だ。会場では学生が開発したオリジナルのゲーム、最新のデバイスを使用したVR作品のほか、総勢30社を超える産学連携教育で取り組んだ作品などが展示され、来場者は実際に試遊・体験できるようになっている。展示された作品の多くにUnityが採用された。4300名を超える来場者を迎え、盛況となった当日の様子をレポートする。
日本マイクロソフト株式会社との産学連携プロジェクト。全身を動かして指示されるミッションをこなし、脱出を目指す。
「こういう近未来的な世界観のアニメや映画が好きなので制作しました。具体的には『マトリックス』や『攻殻機動隊』、『ミッション・インポッシブル』的な要素を全部入れています」
トラッキングには、日本マイクロソフト株式会社のAzure Kinect(高度な深度センサーや、加速度センサー、角速度センサーを搭載し、3D 空間を認識する)というARセンサーを使っている。
「プレイヤーの身体の位置を取得してトラッキングしています。複数人が同じ空間に入っても、最初にトラッキングセンサーに入った人に優先度をつけることで、一人だけがプレイできるという状態になっています。トラッキングはグラフィックボードのCUDAで動かしていまして、グラフィックボードをすごく駆使しているのですが、その分リッチなグラフィックになっています」
そのため、周りで見ている人もプレイヤーと同じ画面を見て楽しむことができる。湾曲した巨大なスクリーンがゲームへの没入感を深めている。
「スクリーンはLEDパネルを繋げることで作りました。ゲームの没入感をすごく高めたかったので、この湾曲型のモニターは135度あり、プレイヤーの視野角のギリギリを攻めています。大きな画面で自らが操作することで、まるでゲームの世界の中に入っているような気持ちになってほしい、自分が主人公と感じてプレイしてほしいと思っています」
株式会社サクセスとのコラボレーションで、Unityを使って作られたミニゲームの展示。プランナー担当、プログラマー担当、グラフィック担当などの複数人でチームを作り、制作しているものがほとんど。
「コラボでは、開発段階から入って頂きました。アセットも活用して作っています。今年のプログラマーは意欲の高くて売り込み上手なんです。積極的に「このゲームをぜひ見てください」とお客様に声がけしてくれます」
下記は開発に携わった学生たちの声だ。
「学校としてUnityの授業に力を入れていて、プランナーであってもUnityを学びます。Unityだと簡単にオブジェクトを置いてステージを配置することができるので、どういう仕組みでどういうことが出来るのかということを学ぶことができます。Unityで何ができるのかがわかると、プランナーがプログラマーに指示をしやすくて、プロジェクトが進めやすくなります。やっぱりプランナーがそういった知識を持っているのはすごく大事だなと思います」
「ゲーム業界に入りたくてTECH.C.に入学しました。Unityを触っていて一番楽しいのは、自分が考えた動きを実装できた時です。上手くいかない時には自分で調べて学んで実践して、実際に動いた時にはものすごく嬉しいです」
「私は初めて作ったゲームを出展しています。プランナーとプログラマーの二人で作りました。このゲームのポイントは、サイドビューなのに3Dで奥行きがあるように見せることで、シュールな世界観を生み出しています。プレイした方からは、カオスという感想を頂きました(笑)。これまでにない要素を組み合わせることで面白さが生まれる、と考えてこのような形になりました。すごくいい経験が出来たと思っています」
「逃げた猫を捕まえるミニアクションゲームを作りました。プランナー二人で作ったので、プログラムを学びつつ周りの人に教えてもらいながらだったので苦労しました。複数ステージがあって、ステージごとにBGMもグラフィックも変えていますし、隠し要素やギミックも入れました。目指したのは、ちょっとした休み時間にも遊べるような、短時間でサクサク遊べるゲームです。ランキングも搭載しているので、友達同士でタイムを競うなど、ワイワイ騒ぎながら遊べるようなパーティーゲームに近い感じです。繰り返し遊ぶうちに、自分のプレイスタイルを発見できるようなゲーム性を目指しています」
「孤独な少女と洞窟で出会った1人の騎士が洞窟からの脱出をするアクションゲームを作りました。祈りをすることでエネルギーを貯めて攻撃します。敵を倒すとアイテムドロップするので、そのアイテムで遠距離攻撃など色々なバリエーションの攻撃をしていきます。ストーリーがあるので、試遊してくれた方はストーリーの先が知りたいと言って40分くらいプレイしてくれて嬉しかったです」
こちらはTECH.C.東京デザインテクノロジーセンター専門学校の学生たちによる、Unity製ゲームの展示。プレイヤーが線を引くことによって弾を飛ばす対戦型のシューティングゲーム「ショットライン」やスタイリッシュかつアドベンチャー要素を盛り込み、倒した敵を利用しながらプレイする2D謎解きアクションゲーム「フランケンシュタインの最果ての旅」など7つのオリジナルゲームの展示を行った。インテルクリエイターアワードを受賞した3Dアクションゲーム「Color Chrome」のリーダーは
「制作期間は半年間です。10名以上のチームで作りました。3Dゲームを本格的に作るというのが初めてで苦労しました。UnityのURPやShader Graphを使い、グラフィックにこだわっています。ボイスは姉妹校の声優さんの方にお願いしており、ゲーム自体がフルボイスになっています」
滋慶学園グループという強みを活かし、他校の学生にも参加してもらうことでハイクオリティな作品制作が可能となった。
業界特別セミナーとして、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンより簗瀬洋平が登壇し、「ゲームの技術が世界を変える Unityの広がり」を語った。
ゲームだけでない学びができるのがTECH.C.の魅力
TECH.C.仙台 仙台デザイン&テクノロジー専門学校 クリエーティブコミュニケーション科ゲームプログラマー専攻の学生たちにお話を聞いた。
「TECH.C.に入学した大きな理由は、ダブルメジャー(複数専攻)のシステムに惹かれたからです。ゲームのプログラム以外にも、3Dやイラストなども学ぶことができます。将来はゲーム業界で働きたいと思っており、そのためにも幅広い知識を身に着けたいと思い選びました」
TECH.C.では、一年次からUnityを学ぶ。
「Unityを使っていて楽しいと思ったきっかけは、プログラミング言語を知らない状態からスタートしてもある程度の完成度があり、楽しいミニゲームを簡単に作れるところでした。また、一人でゲームを作る時でも、アセットストアには無料で質の高いアセットがたくさんあるので、自由に使うことで楽しく制作できます」
「Unityはずっと触っていても飽きないですね。プログラムだけを見るのではなく、キューブを動かした時に目で見て「あ、キューブが移動した」と感じられると嬉しいんです。ずっとUnityを学んで行きたいと思います」
本イベントでも、それぞれが開発に携わったゲームを出展している。
「『ビジークリスマス』というゲームを作りました。クリスマスにサンタがプレゼントを配達するゲームです。プランナー、デザイナー、プログラマーがチームを組んで制作しています。3Dで作ることにこだわっています」
一年次は小規模なゲーム制作や、プランナーの練習も兼ねたゲーム制作を行う。また、「早い段階からチーム制作を体験させたい」という思いから、二年次よりチームでのゲーム制作を行っている。
「『さがしもの』という2Dの探索型RPGを作りました。私がプログラマーで、プランナー2人、デザインの方2人とサウンド3人の合計8人で制作しました。仙台校からのチームでは最も少ない人数で作っています」
「私は『メモリーオブノーツ』という、横スクロールの2Dリズムゲームでプログラムを担当しました。リズムゲームの制作で難しかった点は、判定の部分です。厳しくするとパーフェクトが取りづらくなるのでプレイの楽しさが減りますが、逆に緩くすると次のノーツに影響が出てしまう。そのバランス調整が大変でした」
将来は、ゲーム業界でプログラマーとしての進路を目指しているという。
「僕はeスポーツが大好きなので、eスポーツで世界中の人に戦ってもらえるようなゲームが作りたいです」
「小学生からずっとゲームで遊んでいて、ものすごく強い影響を受けた作品があります。こういうゲームを作れるようになりたいと、制作に携わりたいと思ってTECH.C.を選んだので、将来は人に楽しんでもらえるようなゲームに携われるようになりたいです」
「コロナ禍で思ったのが、行動制限のない世界をゲームで作ってみたいということです。その世界に友達や色々な人が集まって、雨が降ってみたり、雪が降ったり、風で電車が止まるなどの天候の変化があるような、壮大なゲームを作りたいと思います」