2024年3月7日に発表したとおり、弊社、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社とマツダ株式会社は、コックピットHMI(Human Machine Interface, 自動車の運転席周りの空間におけるインターフェース)におけるGUIの開発共創を支えるパートナーシップ契約を締結しました。 (※ プレスリリースの本文はこちら)
このパートナーシップについて、マツダ株式会社の情報制御モデル開発部長の後藤誠二様に弊社オフィスにてお話を伺いました。
— 今回のパートナーシップについての概要を教えてください。
後藤:マツダは、『2030経営方針』のもと、あらゆる領域での研究開発を加速しています。コックピットHMI領域においては、『ひと中心』の開発思想のもと、移動体験の感動を届けるべく、今後も継続的に人とクルマのインターフェースを進化させていきます。
具体的には、人の直感的操作を可能にすることによる安全性と利便性をさらに向上させ、クルマの新たな価値を作り出すことに挑戦します。このような挑戦において、技術革新が著しいゲーム業界での技術力とクオリティの高さがグローバルで高く評価されているUnity様との共創によって、コックピットHMIにおけるGUIの課題解決を図り、マツダが目指す「ひと中心」のクルマづくりを進化させていきます。
— 御社が考える、HMI周辺の現状の課題についてお聞かせください。
後藤:私は入社時からナビゲーション周りの仕事に従事してきました。その歴史を振り返ると、ナビゲーションが表示すべき情報量は年々増加の道を辿ってきました。
たとえば、カーナビゲーションでは古くはCDやDVD、そしてハードディスクを搭載して情報量は格段に上がり、今ではインターネットとつながりクラウド上の膨大な情報を取り扱うことになりました。また近年は、ADAS(先進運転支援システム)の登場により、その性能上昇と共にこれに伴う情報量も増えています。これらの情報をどう分かりやすく表示するかは、その取捨選択も含め、情報量が増えるにしたがって難しさも増えています。
このように、HMIを設計する上で検討しなければならない課題はたくさんあり、また時代を追うごとに膨大、変化、そして複雑になってきています。
— そのようなHMI周辺の現状の課題に対し、御社はUnityを活用しどのような未来を実現したいか教えてください。
後藤:ドライバーは様々な情報を処理しながら運転しています。そのドライバーが直感的に車内外の情報を認識・理解し、操作できることが重要であると考え、Unity様との共創でこの目標を達成したいと考えています。
特にUnity様が得意とするリアルタイムの3DレンダリングをコックピットHMIのGUIに活用して様々な手段で得られる情報を空間として表現・表示することにより、ドライバーが情報を認識・理解する時間や負荷を減らし、より安全性や利便性の高い移動体験を実現できるでしょう。また、ドライバーがベストだと思うGUIは人それぞれの部分があります。そうしたパーソナライズも、ソフトウェア製品群としてのUnityやその周辺にあるテクノロジーを活用することで達成できると思っています。
繰り返しになりますが、マツダが目指す「ひと中心」のクルマづくりにおいて、コックピットHMI領域がもたらす未来の価値は、ドライバーの直感に寄り添ったクルマのインターフェースを実現することで、安全性と利便性をさらに向上させることだと考えています。
— 今回のUnityとのパートナーシップを締結した動機や要因を教えてください。
後藤:クルマの新しいプラットフォームを開発するにあたり、開発統合環境が整っていることと、それを使いこなせるための情報や仕組みがあることを重要視していました。そして調査していく中で、インターネット上の情報や開発ツール、書籍などの豊富さでUnity様を知ることになりました。
このようなことを重視していた背景には、我々が開発ツールを容易に使いこなせる必要があることはもちろん、その開発ツールを活用する外部の開発者の母数が多いことでの人材獲得の容易さが必要であることも挙げられます。その点において、開発情報が豊富で開発者の数も多いUnity様であれば、日本国内に限らず世界各国でスムーズに人材採用から教育までできると思っています。そうした裾野の広さはUnity様を採用した要因の一つです。
また、アプリケーション出力のプラットフォームが複数ある点は、いつでもプラットフォームを乗り換えられるリスクヘッジになり、中長期視点で自社のHMI資産を活用できるのではないかと感じています。
— 今後、Unityをどのように活用していきたいかを教えてください。
後藤:コックピットHMI領域に関係する部署だけでも、私が率いるHMIの設計部門、デザインを担当する部門、ユーザービリティなどを研究・開発する部門があります。その中だけでも、上流工程・下流工程の認識が発生することもあり、そうなると部署間で工程を渡された瞬間、目的や意図がうまく伝わらないことも少なからず存在します。
しかし、これらの部署それぞれでUnityを導入することは可能だと考えていますし、そうすれば同じ開発環境下で同じ画面を見ながらお互いの意見やアイディアを伝え合ったり、様々なプロトタイプを作ることでプロジェクトを進めることができるでしょう。そうすることで開発作業自体を楽しく進めたり、今まで以上にお客様視点に立った提案が出てきたりすると思うのです。またそういう風通しの良い開発環境・体制を構築することで、より価値の高い製品を生み出せると私は信じています。