Unityを使った産官学共同開発経験で「即戦力」としての技術を身につける
Unityでのアプリ・XRコンテンツ開発によって社会で必要とされる能力が自然と身についていく。湘南工科大学の「実践的」な取り組みとは
神奈川県藤沢市にキャンパスを構える湘南工科大学。約60年の歴史を誇るこの大学の特徴は「即戦力」になる学生を多く輩出していること。そのため学生が能動的に授業に参加し、実践を繰り返すことで理解を深めながら成長していく「アクティブラーニング」を推進している。
また、さまざまなビジネスの分野において高度なICT技術が求められており、そうしたニーズに対応できる工学技術者を輩出するため常に最新のテクノロジーに触れながら教育を受けられる環境が整っている。本学で特筆すべきなのは、「地域との繋がり」を大切にしていること。特にコンピュータ応用学科では、自治体との産官学連携プロジェクトに取り組んでいる。
自治体と連携した地域振興のためのスマホアプリ開発
コンピュータ応用学科の橘俊宏研究室では、藤沢市や藤沢商工会議所と協働でスマートフォン向けアプリ開発に取り組んで、成功を収めている。例えば、藤沢商工会議所と連携したグルメガイドは日本語版・英語版を開発し、iOS・Androidの両方に対応させた。アプリのデザイン、イラスト、実装などの各工程はすべて学生たちの手により行われている。アプリの開発費も自治体から提供されており、クライアントの要望のフィードバックなど「受託開発」さながらの体験が実践できているのが素晴らしい。
いずれのアプリの開発にもUnityは不可欠なもの。自らが携わったアプリを就職活動の際に提出し、「Unityでの開発経験がある」という明確なスキルがあるため、面接官と「開発者」としての会話が弾み、採用に至ることも多い。
歴史的文化遺産のXRによる復元
コンピュータ応用学科の長澤可也研究室では、史跡などを3DCGにより復元し、VRやARにより体験できるアプリを制作している。例えば、鎌倉市の史跡永福寺跡は源頼朝が建立した寺院の跡だが、現在は焼失しており当時の姿を見ることはできない。そこで,当時の姿をVR技術によりさまざまな角度から見ることができるようにしたコンテンツを開発。現在、鎌倉歴史文化交流館に常設展示されているという。
また、史跡永福寺跡にQRコードが書かれた看板を設置しAR技術により永福寺を眺めることができるスマホアプリの開発も行っている。この他にも綾瀬市にある弥生時代後期の史跡・神崎遺跡についても当時の姿を復元したVRコンテンツを制作。これらの試みについても開発のすべての工程が学生たちの手により行われている。いずれのプロジェクトもICT技術を活用した地域や自治体への貢献の事例といえる。
コンピュータ応用学科全体でPBLを推進
コンピュータ応用学科の本多博彦研究室では、メディアアートの制作にUnityを使用している。制作した作品を集めて藤沢市内で展示会を開催している。いずれのプロジェクトにおいてもアプリの設計、デザイン、3DCGでのモデリングから実装まですべてを学生たちが手掛けることで、付け焼き刃ではない実践的なスキルの習得ができる。
技術スキルとともにコミュニケーションのスキルを身につける
「ゲームに興味がある学生が多いので、Unityへの関心は高いです。習得しやすいので、そこからスマートデバイス向けのコンテンツ制作へとスキルを広げていきます。チームを組んで制作に取り組み、クライアントの意向を汲んだプロジェクトに練り上げていくという過程を経て、技術スキルとともにコミュニケーションのスキルも身につけていきますね」と橘先生は語る。
全学的な取り組みとしてUnityを導入
コンピュータ応用学科以外にも、湘南工科大学独自の取り組みである「学科横断型学修プログラム」においてもUnityを活用している。学科横断型学修プログラムとは、より高度な専門技術を学びたい学生が学科の枠を越えてチームを作りプロジェクトに取り組む特別なプログラム。特にXRメディアコースでは自動車運転シミュレーションを制作するなど、多種多様なプロジェクトに取り組み、その成果を学会や展示会などで公表している。大学祭においてもVRなどを使ったコンテンツを公開し来場した近隣の子供たちに大人気だったという。
これからも湘南工科大学のUnityを用いた「地域との繋がり」を大切にした取り組みは続く。