『ラビィとナビィの大冒険』:チーム名[空想探求] – Unityインターハイ2020 受賞作品

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Hidetyo’s Apps(藤澤 秀彦さん)インタビュー

──優勝おめでとうございます!Unityインターハイには6度目の応募で、最後の年に優勝に輝くという素晴らしい成績を納められましたね。まず、受賞した率直な感想をお聞かせください。

藤澤:ついにここまで来たかっていう感じです。6年目なので、毎年ちょっとずつクオリティを上げていって。途中『ナビィの大冒険』で2017年に初めて本選に出られて、そのキャラクターでついに優勝をいただけたというのは本当に嬉しいです。

──聞くのも野暮かもしれませんが、今回のインターハイに応募したきっかけは?もう、ライフワークですかね。

藤澤:そうですね。いつもどおりインターハイがあったら応募するということで毎年作っているんです。

──『ラビィとナビィの大冒険』の制作期間はどれくらいですか?

藤澤:制作は2020年の1月から始めました。

──藤澤さんの印象って、とにかくずっとゲームを作っている人ということで。インターハイって藤澤さんにとってはただの区切りであって、ずっと制作しているんですよね。

藤澤:普段の制作とUnityインターハイで違うのは、やっぱり締め切りがあることですね。制作を1月から始めて、作業に割けるのが例年より少ない時間だったので、締め切りまでにオープニングからエンディングまで遊べるような形にするのが難しくて。友人と他のゲームを作っていたので1月からのスタートになってしまったんですが、今回は本当に時間との戦いでしたね。

──藤澤さんがゲーム開発をやってみようと思ったきっかけを教えてください。

藤澤:小学5年生ぐらいの頃に学校の図書室で『テレビゲームを作る』という内容の本を見つけたんです。それが90年代の『ドラゴンクエスト』の作り方について書いてある本で。それを見て、友達と「じゃあ、ゲームを作ってみようか」って盛り上がって企画書を書いたんですよ。企画書といっても自由帳にストーリーをめちゃくちゃな字でめちゃくちゃに書きなぐっただけなんですけど。でも、書いたところでこれをどうやってコンピューターで動くゲームにすればいいのかがわからなかった。それからUnityを知って「これを使えば自分の考えたゲームを形にできるじゃん!」と思ったのが始めたきっかけです。

──『ラビィとナビィの大冒険』は従来のオープンワールドRPGの流れをすごく忠実に踏襲していますよね。『ゼルダの伝説』の『時のオカリナ』とか。

藤澤:はい。ニンテンドー64の『時のオカリナ』、『ムジュラの仮面』や『スーパーマリオ64』、『バンジョーとカズーイの大冒険』など、64の黎明期のポリゴンゲームには影響されています。

──今作は『64のゲームを今の技術で再現したらこうなる』というお手本的な感じがしました。今回一番すごいなと思ったのが、最初からちゃんと真ん中の目を引くオブジェクトがあって放射状に重要な場所がある。そこを自然に巡っていくと必要なアイテムが集まっていくところです。迷わないんですよ。自分の意思で探検しているのに、ちゃんと藤澤さんがプレイしてほしいようにちゃんと設計されている。

藤澤:動線の引き方というか、思った通りに進めてもらう工夫にはかなり苦労しましたね。

──そしてロードが早い。

藤澤:実は今回かなり軽量化をやっていて、テクスチャは基本的に128×128なんです。多分そういったところでロード量が減っているんじゃないかなと思います。ロード時間というよりは、単純に動作するときのスペックを選ばないようにということを考えているので、それと一緒に早いロード時間がついてきたっていう感じですね。

──あとはやっぱり、レベルデザインのお手本のようなことをきっちり意図して作っていますよね。ああいうステージをちゃんと設計したことがある高校生って多分、世の中にはほとんどいないと思います。…というのは、それを動かすベースになるものを普通は作れないので。だからその積み重ねてきたノウハウはちょっと他者の追随を許さないものがあると思います。今ゲーム業界で働いている人でも3Dアクションゲームで、広いフィールドで、ちゃんと謎を解いてストーリーを進めるみたいな物を作れる人ってごく一部なんですよ。そういう意味では1人でそれを全部やっている点で、ある意味プロよりもすごい一面というのがあると思います。

藤澤:ありがとうございます。

──普通のゲーム制作だとゲームデザイナーの人がラフ的に書いて、それをレベルデザイナーが作るやり方もありますが、藤澤さんはそれを全部一人でやっているんですよね。

藤澤:僕が作る時には順番はあまり考えないんです。本当に粘土を作る感じでコネコネとUnityをいじっています。全部自分で作っているので、情報の伝達のコストがないから行ったり来たりして作っています。「あ、ここちょっと駄目だな。ちょっと戻そう」ってちょっと戻して、また盛ってみたいな。それで大体の形を作っていく感じですね。

──アニメーションシーンでも全身が動いて演技しているのがわかりました。

藤澤:一応、自分としては見ていて飽きないものを作ったつもりです。アニメーションシーンってプレイヤーは操作できないから「早くしてくれ」って思うと思うんですけど、極力そう思われないように動きを多く入れたりして。だからしゃべっているキャラクターによってカメラの角度が変わったりっていう、全体的な動きを常に入るようにしていますね。

──だから、現代のゲームでされているようなことがほとんど実現されているんですよね。例えばミニゲームで、速度が上がったときにカメラが引いてエフェクトが入ってスピード感を出したり。ちゃんと状況によって音楽を変えていくインタラクティブミュージックも作っていたり。ちゃんとカメラを動かしながら人がしゃべって飽きさせないという、およそ考えられるようなことを全てやっている感じがあります。

藤澤:そういうことは「ちょっとここ、カメラの画角が広がったらすごい気持ちいいな」って思ったら、それを入れていくという感じですね。それに、作ったものを友達に見てもらったり触ってもらったりしてもらってリアクションを見ると「ここでつまづくのか!」ということがわかるので、そういう自分で気づかなかったところをフィードバックしていきました。

──『ラビィとナビィの大冒険』ではゲームと連動するリアルのマスコットも作っていましたよね。

藤澤:はい。自分で買った3Dプリンターで作って模型用の塗料で塗りました。この台座の部分にチップが付いていて、ゲームと連動するんです。

──藤澤さんのセンスはどこから来ているのかというか、普段はどういうインプットをされているんですか?

藤澤:いろいろなゲームをいつもやっているので、そこから学んでいます。

──藤澤さんの作りたい理想のゲームはどういうものですか?

藤澤:そうですね。3Dアクションゲームの全ジャンルを踏襲したようなものを作りたいんですけど、自分の作っているゲームが偏っていて、バトルシーンのあるゲームの経験値っていうのが自分にはなくて。ちょっとそういうゲームをいろいろやってみないとな…とは思っていますね。

──今後、どんな活動をしていきたいですか?

藤澤:大学では、ゲーム・ソフトウェアだけではなくてヒューマンインタフェースを研究したいです。人間がもっと触れやすいような、何かちょっと面白いことをしながらそれをゲームと結び付けていくような。もうゲーム機自体から造っちゃいたいぐらいです。その辺にあるものではつまらないので、それこそ思いつかないような物を思いつきたいです。

──では最後に、あなたにとってUnityインターハイとは何でしたか?

藤澤:本当に自分の成長の過程そのものですね。毎年毎年、自分の今年1年間、ここまで成長したんだぞっていうのをみんなに見せていく場であったので、それでついに最後に、こうやって優勝をいただいて、本当にきれいに成長できたなと思っています。

──これからの活躍も楽しみにしています。ありがとうございました!

『ラビィとナビィの大冒険』タイトル概要

主人公のうさぎ「ラビィ」とその友達の妖精「ナビィ」が大魔王に隠されてしまった幸せの象徴「セイクリッド・キャロット」を取り返す冒険へ出るアクションアドベンチャーゲーム。物語を進めるごとに増えていく多彩なアクションを駆使して、森や海、洞窟などといった様々なステージを冒険する。

『ラビィとナビィの大冒険』

チーム:Hidetyo’s Apps(藤澤 秀彦)

2020年度 Unityインターハイ 優勝作品

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