『ライフゲイムワンダラ』:チーム名[赤モンド] – Unityユースクリエイターカップ2022 受賞作品

目次

赤モンド(藤田 亜門さん)インタビュー

──準優勝おめでとうございます!初めて参加されたのが前々回で、その時はブロンズアワードで、前回は審査員特別賞を受賞されて。今回、ついに準優勝となりました。今のお気持ちを聞かせてください。

藤田:本当にびっくりしています。心の波というか、水面がだんだんせり上がってきていて、内側から圧迫されているような気持ちです。準優勝なんて全く考えていませんでした。この作品には相当自信があったのですが、他のハイレベルな方々に囲まれていて「良くてゴールドアワードが貰えるかどうか……」と思っていました。そんな中こんなにすばらしい賞をいただけるだなんて、心底驚きました。

──藤田さんにとって、Unityユースクリエイターカップ(Unity杯)はどういう存在ですか?

藤田:一昨年出場してから、恒例行事という感じになっています。一度出してしまうと、どんどん上に行きたくなってくる欲求があって、どんどん自分の中でのレベルが高くなっていく大会です。元々は通っているプログラミングスクールの方にUnity杯を教えられて、腕試しとして応募したのがきっかけですが、「ライフゲイムワンダラ」はUnity杯のために作りました。自分は話し下手だと思っているので、過去の大会ではまずブロンズアワードをいただいて「ああ、発表することにならなくて良かった」と実は安心していたんです。そこで発表する場なしに賞をいただけたことで、次大会で2次審査を通過した時に心の余裕を貰えました。前回のUnity杯はオンラインでの開催だったため、これがプレゼンに消極的な自分を安心させたんです。この段階を踏んだために、今回のオフライン開催は驚きと共に楽しみがありました。結局話し下手であったことに変わりはありませんが、前に出て自分の言葉で伝えることは楽しかったです。本当にありがとうございます。Unity杯は、結果が出て次につなげられるというところがあって、他の人の発表を見ると、どんどん心が震え上がるというか燃えてきて、自分もやる気になるというか、向上心を手に入れられたところが大きいと思います。

──「ライフゲイムワンダラ」で素晴らしかったところが、ライフゲイムをアクションゲームに仕上げたというアイデアですね。それだけではなくて、ライフゲイムというのはデジタルなのに生き物みたいな振る舞いをするというのが面白さだったけれども、ちゃんとセルをシェーダーで描いて生物的なうごめきを表現したり、ステージの周りを幕のようなもので覆って生物感をしっかり出していたり。また、ステージ間の移動するところをツリー状にしたり、全体をやっぱり1つのライフゲイムというコンセプトを生物感によってまとめているのも素晴らしいと思います。

藤田:ありがとうございます。デザインについて考えていたことも読み取っていただいてうれしいです。そもそも、自分は画力が無いので見た目のほとんどはシェーダーグラフに頼りきっているんです。そういった所から生まれたシンプルなグラフィックは課題とも言えますが、自分らしさとも考えています。また私は他の人に影響を受けやすい気質があるので、あるいは自分らしくない所もある意味では自分らしいと言える気がします。

──「ライフゲイムワンダラ」の開発でどんなところにこだわりましたか?

藤田:ライフゲーム部分の基礎の実装ですね。各ステージのセル配置を2次元配列としてScriptableObjectに保存するため、初めてエディター拡張を触ってみました。しかし2次元配列はシリアライズできないことを知らず、なかなか保存することができずに苦戦していました。結局保存する時だけ1次元配列に変換するという力技でなんとかしましたね。またエディター拡張にはお世話になるはずなので、次こそ仲良くしたいです。エディター拡張に手を出そうというところも、他の方を見ていなければ思い立たなかったでしょう。工夫したのは、セルの変化をなめらかに変化させるようなアニメーションなどですね。周りのセルによって変化する様と、“ライフ”ゲームとして、生命や有機的なものを表現する目的で取り入れています。

──藤田さんには、トータルで自分のゲームをきっちりまとめていく力がすごくあると思うんですね。だから、ライフゲイムというアイデア一発ではなくて、多分どんなアイデアを思いついても、きっちりと自分の1つのパッケージとしてのゲームに仕上げていく力があるなというのはすごく感じました。何かまた新しいアイデアが思いついてすごいゲームが作れるんじゃないかなと思っています。

藤田:そうなるといいですね。そもそも今回、「ライフゲイムワンダラ」を作ると周りの人に言った時に、誰もライフゲイムのことを知らなかったんです。そこでライフゲイムの魅力を伝えられる様に色々な工夫を凝らしています。影響を受けたのはウィリアム・パウンドストーン著「ライフゲイムの宇宙」です。ライフゲイムの魅力について考える時に参考にしましたし、ライフゲイムワンダラという題名もこの本のオマージュです。他には無意識のうちにえふぇ子さんの「Mathmare」にコンセプトなど影響を受けている気がしています。

──藤田さんは、どうしてゲーム制作を始めたんですか?

藤田:一言でいうと、本当にゲームが好きだからです。自分は小学生ぐらいの時からゲームばかりしていて、「自分でもゲームを作れるらしい」と知った時に、作りたいな、と思ったんです。始めたきっかけは、兄の高校の文化祭でパソコン部の展示があって、ゲームの展示をしていたんですね。それがいい感じのゲームだったので、「そうか。ゲームって作れるんだな」と思って、その日のうちに「パソコンにUnityを入れて」と親に頼んで、そこから始めました。

──Unityを使っていて楽しい時はどういう時ですか?

藤田:やっぱり結果が目に見える時が一番楽しいですね。プレイヤーの動きを考えて、それをプログラムに移して、初めてそれがすぐにパッと目に映る形でちゃんと動いているというのが分かる時です。逆に目に見えないところは頭がこんがらがってしまうんですけども、最終的にそういう大きなものができて、自分の目と手とその他で感じることができる時もかなりうれしいと思います。目に見える形で自分のプログラムやデザインが動き始めると、その時点でかなり満足してしまうぐらいに嬉しくなります。また、そこに至るまでに、どうやったら自分の思うものを実装できるかと脳内で組み立てる過程も楽しいと思っています。まあ大抵は実装途中で抜けに気づいてぐったりしてしまうのですが(笑)。今回だったら、足が動いていくアニメーションであったりとか、ライフゲームがパッパッと切り替わっていく様子だとか、そういうところがやっぱり一番楽しくて、脳で分泌する物質がたくさん出る時だと思います。

──現在高校2年生ですが、進路などは考えていますか?

藤田:小学生の卒業文集で将来の夢を問われたのでゲームクリエイターと答えました。それにより将来の夢が確定してしまっています(笑)。Unity杯ではdiscordのグループで他の参加者方とも交流させていただいて、他の方の受賞を見守ったり互いのゲームで遊ぶことが多いです。ありがたいことに、普段の自分の周りには参加者の皆さんほどレベルの高い人はいませんから、良く刺激を貰っています。今は言葉遊びや文字そのものを扱ったテーマであったり、少し頭を使うゲームは作りたい気持ちがあって、1週間ゲームジャムなどで作ることはあるのですが、長く作る作品としてはまだ何も考えていませんね。アイデアが降りるのを待っています。ひとまずはゲームを作ってスキルを磨きつつ、大学に推薦で入ることができればいいなと思っています。ゲームプログラマーとして職に就きたい気持ちがあるので、プログラミング力をできれば高めていきたいです。

──ありがとうございました!

『ライフゲイムワンダラ』タイトル概要

「ライフゲーム」を取り入れた2Dアクションゲーム。プレイヤーは、ライフゲームの規則に従って様々に変化するセル群を足場にしてゴールを目指す。ライフゲーム最盛期に主流だったグリーンモニタへのオマージュをテーマにした、スタイリッシュなUIが特徴。

『ライフゲイムワンダラ』

チーム:赤モンド(藤田 亜門)

2022年度 Unity ユースクリエイターカップ準優勝作品

目次