sai(宮城 采生さん)インタビュー
──優勝おめでとうございます!2018年の本選大会では、わずか10歳にも関わらずUIもゲームシステムも完成度の高い「オシマル」で最年少準優勝を勝ち取られて。あの天才が帰ってきた!ということで興奮していました。
宮城:ありがとうございます。中学受験で一度開発を止めていたのですが、中学校に入ってから、昨年もいろいろと作品を作っていました。その一つが、今回と同じくNavMeshを使った作品です。でも重くて動かないという問題が解決できなくて、去年は参加できなかったんです。そこで一年かけて問題を突き止めて、リニューアルして作ったのがこの「BREMEN」になります。最終的にゲームの内容とかは変わってしまったけれど、ずっと悩んでいた問題を解決して、優勝することができてすごくうれしいです。諦めずに頑張ってきてよかったなって思っています。
──宮城さんが作るゲームは、グラフィックも音もすごくレベルが高くて、何もかも素晴らしいんですけど、プロとして長年ゲームを作っていた立場から特に優れていると思う点がレベルデザインなんですね。つまり、ゲームを遊ぶための空間を設計することなんですが、宮城さんはとにかくステージの作り方が上手い。「BREMEN」では、序盤は慎重にニワトリをうまく配置して、プレイヤーがニワトリだけで敵を倒せるようにしている。そこで止めてしまうと、単なるニワトリを配置するゲームになってしまうんですが、ゲームが進んでいくに連れて、ニワトリだけでなく、ゾウなど他のキャラクターを出して、相手の攻めを潰すという作戦が求められる。最初のセオリーをひっくり返して、プレイヤーが色々なことができるようにならないと先に進むことができない。こういったバランス感覚は、どこから学んできたんでしょうか?
宮城:幼稚園ぐらいの頃から家にゲームがあって、ゲームで遊ぶのが大好きでした。ゲームをプレイしながら、自然と参考にしてきたのかもしれません。また、制作時に家族に遊んでもらって反応を参考にしています。自分だと「これは単なる作業だな」と思うステージでも、初めてプレイする人にとってはゲームを学ぶ重要な場面だったりするので、他人の意見を聞くことはすごく大事だなと感じます。
──今回の「BREMEN」は、童話の「ブレーメンの音楽隊」にインスパイアを受けたということですが、どういうところが宮城さんに響いたんでしょうか?
宮城:ブレーメンの世界観でゲームを作ろう!と思って制作し始めたわけではないんです。開発を始めた当初は、ゲームシステム自体は今の「BREMEN」と同じですが、キャラクターではなく箱型の仲間を呼び出して、逃げながら相手を倒すというゲームでした。でも大会に出すのなら、ただの箱ではなくてキャラクターをデザインしなければならない。そこで前回「オシマル」が動物モチーフだったこともあり、直感でニワトリやゾウ、ネズミなどの動物にしました。その時点で「ブレーメンの音楽隊」の物語を知り、世界観が似ているな、と思ったことからモチーフにしました。
──「BREMEN」では、ちょっとアクションっぽいところもありますよね。ニワトリの弾に当たらないように気を付けながら、ニワトリが弾を発射して障害物に当たった瞬間に出ていってゾウをぶつけて敵を倒す爽快感があった。そこが前回の「オシマル」との違いを感じました。
宮城:ありがとうございます。他に頑張ったところは、重くならないようにしながらもいろんなテクスチャを入れたところです。最初はアイデアを詰め込んでみてもいいんですが、あくまでも「自分がどれを見せたいか」を考えて、構想を膨らませて、余計なものを削ってから最後に実装しています。実装してから削ると、かなり時間を食ってしまうので。
──宮城さんはまだ若いけど開発経験が豊富ですから、そういうことができるようになっているんですね。ちなみに最初にお話されていた、動かなかった作品では、何体ぐらいのキャラクターを出していたんですか?
宮城:ゴッドゲーム、いわゆる上から見下ろすタイプのゲームでした。マップも広くて、100体くらい出していたんです。
──なるほど。実際のゲーム開発で経路探索のためにNavMeshを使う時は、NavMeshを1フレームに1体だけ検索させるやり方をしたりしますね。そうすれば、キャラクターが多くても作れるかもしれないです。
宮城:なるほど、そうなんですね。
──そもそも、宮城さんがゲームを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
宮城:まず家庭環境として、両親がどちらとも美大出身で、父はデザイナーをしているんです。ゲームを作るきっかけは、小学校4年生の夏休みでした。「パソコンなどのデジタル機器で何かを作ってみよう!」というお題が家族で出されたんです。自分は何をしようか、と思った時に、ゲームを作りたいな、と。最初はScratchでブロックを組み合わせるところから初めて、そこから作りたいものがScratchで出来る範疇を超えてきたところでUnityの存在を知って、Unityでゲーム制作を始めました。それで1年ちょっとかけて出来たのが「オシマル」です。
──すごい英才教育ですね。「BREMEN」も、グラフィックがすごくきれいでまとまっていて、すごくセンスを感じるものがあるんですよね。自分でグラフィックを作ってみたりすると、実はお父さんとかお母さんはすごいんだなと思うときがあるかもしれないですね。宮城さんは、ゲームを作る上でどの工程が一番好きですか?
宮城:思いついたゲームのアイデアを、小さく実装する時ですね。「こんなゲーム面白いかな?分からないけど、取りあえずちょっとだけ作ってみよう」という感じで、デザインなしで四角と丸を使って、一面だけ作ってみるんです。そうやっていろいろ作ってみる中で、「あ、これは面白い」と感じたものをどんどん磨いていって完成させるんですけど、やっぱり最初の小さいものを作っていく段階が一番楽しいです。「これはクソゲーじゃないか?」って思って作ってみたものが意外と面白かったりすることもあるので。
──プロトタイピングって本当に一番楽しいですからね。作り始めるのが一番大事というのがすごくよく分かるお話ですね。例えば他にどんなゲームを作っているんですか?
宮城:今まで出してきたゲームでは、アクションゲームが少ないのですが、実はかなり操作性の悪い変なちょっとしたアクションゲームやそれ以外のジャンルも作っているんです。ただ、私自身結構がストラテジーゲーム、戦略性が重要になってくるゲームを好んで遊ぶ傾向があるので、それが発表するゲームに影響しているのかもしれません。
──これからのお話ですが、作ったゲームをリリースすることなどは考えておられますか?
宮城:はい。考えています。
──これまでの優勝者たちもNintendo Switchなどでリリースされていますので、宮城さんも最年少でのリリースを目指して欲しいです!ありがとうございました!
『BREMEN』タイトル概要
プレイヤーが直接操作するイヌと、自立的に動くネズミ、ゾウ、ニワトリを呼び出して駆使し、迷路の中で敵を倒すアクションストラテジーゲーム。それぞれの動物によって攻撃向き、防衛向きなどの特徴があり、戦略的に各動物を使いこなすことによってボスを倒すことが求められる。
チーム:sai(宮城 采生)
2021年度 Unity ユースクリエイターカップ 優勝作品