山羊(矢木 彰人さん)インタビュー
──まずは、準優勝とスポンサー賞のダブル受賞おめでとうございます!今はどんなお気持ちですか?
八木:受賞した瞬間は、全く実感がなくて。時間が経てば頭が追いつくかな?と思ったんですが、まだ追いついてなくて、いま感想を言うと浅い「うれしい」になってしまいそうなので、今はあえて言いません(笑)。
──今回Unityユースクリエイターカップ(Unity杯)には初参戦ですが、どうして応募しようと思ったのですか?
八木:Unityを使い始めた中1の時から大会の存在自体は知っていました。それで夏休みに作っていたゲームがちょっといい感じだから、大会に出してみよう!と思い、ちょうど募集していたUnity杯に参加したんです。
──「発想が天才的」というコメントもありましたが、どういうきっかけから「ObotShooter」を思いついたんですか?
八木:最初のきっかけはYouTubeで見た、ヒンジジョイントで関節をつなげて2Dのラグドールを作るという方法があるという動画を見たことでした。それで、自分もちょっと実験してみようかなと作り始めたことがきっかけです。初めて知ったことを、新しくプロジェクトを作って実験するのって、自分はすごく楽しいんです。それで物を持たせたり、手に追従するなどやってみていたら、と「銃を持たせて撃ったらシューティングゲームになって面白そうだ」と、ゲームにできるんじゃないかと思いついたんです。最初のデザインはすごくシンプルで、キャラクターに顔をつけたり、銃の種類を増やしたりしていきました。
──開発で特にこだわったところはどこですか?
八木:独特で面白い動きの中にあるかっこよさ、爽快感などゲームの楽しさに重きをおいたゲーム体験を作りたいと思いました。開発では、「ObotShooter」特有の独特なふにゃふにゃした動きを損なわないまま、アクションゲームとして軽快で楽しい操作感を実現する所や、操作が難しく初心者と上級者の差が激しいこのゲームで敵の強さを手ごたえを感じるが理不尽ではない適切な難易度に調整する所にこだわりました。苦労したところは、引っかかって伸びたり体が思った方向に動かなかったりと、不具合を起こしやすい物理演算でキャラクターを構成し、何度もキャラクターを作り直すはめになってしまったところですね。でも開発自体は、動きが面白かったので楽しかったです。
──八木さんがUnityを始めたきっかけは何ですか?
八木:実は、僕の家ではゲームが禁止されているんです。3人兄弟がいて、10年ぐらい「ゲームをやらせて!」ってお願いしているのに鉄壁のガードで全然やらせてくれないんです(笑)。でも友人の家でゲームをやらせてもらって、「ゲームってすごく楽しい!」というのは知っていて、ずっと憧れがありました。自分でゲームを作るようになったのは、中学受験が終わってパソコンを買ってもらったのがきっかけです。買ってもらえないなら、自分で作ろうと。最初は小学校でやったScratchでいろんなゲームを作りました。ゲームを作って動いた時や、友達に見せて反応が返ってきた時がめちゃめちゃ楽しくて、「ゲームを作るってすごく楽しいな」と思ったんです。でもScratchでやれることに限界を感じて、何か他にないかな?と探していた時にUnityを知って使い始めました。Scratchに比べて難しかったけど、ゲームを作るのが楽しかったからUnityを学ぶのは苦ではありませんでした。シーンビューの使い方を覚えて、移動とかスケール、回転なんかはすごく上手になったんですが、ゲームを作るまでには全然至らなくて。触り続けるうちに何となく分かってきて、「Unityの教科書2018」などの本を買ってきて、「ああ、こういうことだったのか」と知って試してみたり。ゲームを作りながらわからないところがあったら教科書に戻る、ということを繰り返してスキルを身に着けていきました。やっぱり、ゲームの世界やゲームデザインについて構想を練ってまだ見ぬ素晴らしいゲームの世界を妄想するときや、自分の思い描いた通りにゲームが動いた時はすごく楽しいです。
──そうだったんですか。「ObotShooter」は、完成度がすごく高いですよね。ゲームを始める時はどんな状況か分かってちゃんと動かせるようになっていたり、画面の質とか動きが、よくできたインディゲームと同じようなクオリティになっている。ゲームが禁止されているのに、そういった、「ゲームはこういうふうにできている」という作法はどこから学んできたんですか。
八木:こっそりYouTubeを見ていました。それでゲーム実況だったり、ゲームデザインについて話す「ゲームクリエイターズツールキット」というチャンネルを見て学んだんです。そこで例えば、メトロイドヴァニアのステージ構成のやり方について、まずこっちでアイテムを取って、それによってこっちが行けるようになってみたいな、ゲームデザインについて学びました。
──それで学んできたんですね。「ObotShooter」は、もっとステージを増やして、ボス戦などがあったら充分にリリースできるレベルだと思います。
八木:反省している点は難易度調整ですね。主人公がマシンガンとかショットガンを使えるなど、結構要素を入れていたんですが、難易度が高くてそこまでたどり着けないプレイヤーの方が多くて。制作者がゲームに関わる時間が一番長いから。一番ゲームが上手になってしまうんですよ。制作者が楽しめるボスだと強くなってしまう。「ObotShooter」は操作の癖が強くて、慣れた人と慣れていない人の差が大きくなってしまって、開発者が「まあまあ面白い」という面が慣れていない人だと「絶対無理」になっていしまったり。でも忖度しすぎるのも良くなくて、制作者が楽しめないゲームはゲームとして駄目だと思うので、例えば「地獄モード」のように難易度を調整できるようにしたら、初心者もステージを進めて楽しめるゲームになる気がします。制作中にいろんな人にプレイしてもらって、だいぶちょうどいい難易度だと思っていたけど、まだちょっと調整が必要ですね。
──八木さんにとって、Unity杯とは何ですか?
八木:エンターテインメントに触れるのが禁止されていると、共通の話題が学校の友人とでもあまりないんですよ。みんなゲームの話をしていても、そういうゲームがあるという情報は知ってはいても、話に入れないこともあります。そんな環境で、Unity杯はゲーム開発者と知り合える場としてすごく得るものが多かったと思います。同年代のゲーム開発者と知り合えてUnityの話で盛り上がることができたのがとても楽しかった上に、かなり刺激を受けて開発のモチベーションも上がりました。こういう大会に出場するのは行動力が必要で、一歩を越えることができていろんな人と知り合うことができた。ここからが始まりみたいな、初めの関所じゃないけど初めの門みたいな、そんなものかなと個人的には思っています。
──最後に、次の目標を教えてください。
八木:これからは、もっと自分が知らないことに挑戦し、いろいろなものを組み合わせる独創的な作品を作っていきたいです。来年のUnity杯には参加すると思います。今回、2014年の大会から全部プレゼンなどを見たのですが、年々レベルが上がっていますよね。来年どんな結果が残せるのかわかりませんが、できたら優勝したいと思っています。
──ありがとうございました!
『ObotShooter』タイトル概要
キーボードとマウスで、破棄されてしまったロボット”Obot-3678”を操り、敵を撃ったりスライディングなどのアクションを駆使してクリアを目指す2Dシューティングアクション。マウスでキャラの腕を動かし敵を狙う。物理演算による独特の操作感!
チーム:山羊(矢木 彰人)
2022年度 Unity ユースクリエイターカップ 準優勝およびスポンサー賞作品